日経電子版より抜粋。
1.会計ルールのキーワード
【減価償却】資産はだんだん価値が減っていく
例えばある会社が取引先に製品を届けるために500万円のトラックを現金で買い、業務に使い続けるとします。これをPL(損益計算書)、BS(貸借対照表)、CF(キャッシュフロー計算書)で考えてみましょう。
一番わかりやすいのがCFです。現金の動きを示すCFでは、買った年の投資CFがマイナス500万円になっています。
次にBSで考えてみましょう。買った年に資産のところで500万円の現金が減り、500万円のトラックが増えます。ここまでは簡単です。
ただBSは資産の状況を示すものです。買ってから1年たったら、トラックは中古車となり500万円の価値はなく、時価に直す必要があります。年間100万円ずつ価値が減っていくとして、2年目は400万円、3年目は300万円・・と価値を減らしていきます。
最後にPLで考えてみましょう。CFのように1年目に500万円を費用として計上すると、トラックは何年も使うのに1年目だけ費用が大きくなります。PLというのは売り上げに貢献した期間に応じて費用にする特徴があります。5年間使うなら費用は5年に分けて計上しようという考え方です。
この期間に分けて計上することを「減価償却」といい、各年にわけて計上した費用を「減価償却費」といいます。先ほどのBSの資産価値は減価償却した分減ることになります。ここでもBSとPLはつながっているのです。何年かけて償却するか、どのような方法で償却するかは、会社の方針や資産によって変わります。
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【減損】突然、価値がなくなることも
資産は買ったときに計画した通りには使えなくなることもあります。先ほどの500万円で買ったトラックで考えてみましょう。
1年目は予定通り、PLで100万円を減価償却費として計上、BSは500万から400万円に減りました。
2年目の途中で事故を起こし、大破してしまいました。トラックとしての価値がゼロになってしまったため、BSは2年目で400万円から一気にゼロになります。PLでは400万円を一気に費用計上します。これが「減損」で、計上する費用を「減損損失」といいます。
減価償却からの流れをわかりやすくするためトラックで説明しましたが、実際に企業が減損するのは工場や設備、店舗などで、稼ぐ力が落ちて資産価値が大きく低下したときが多いです。
土地は使うことによって価値が減るわけではなく、減価償却はしません。ただ減損の対象にはなるため、地価が大きく下落したときは減損します。株式などの有価証券も減価償却はしませんが、減損はします。
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【のれん】M&Aで生まれる不思議な資産
会社を買収するということは、新しくその会社の株主になるということです。つまりこれまでの株主から、株主の持ち分である純資産を買うということになります。
ただ買収の際には資産と負債を時価に見直します。資産と負債の差額である純資産もBSに計上されている額と変わります。さらに高く売りたい既存株主やライバルの存在から、時価より高い値段で買うことになります。この差額を「のれん」といいます。
純資産の時価が100億円のB社をA社が300億円で買収したとしましょう。買収後には、A社はB社を取り込んだ同じグループとして連結したBSになります。
連結されたBSからは、A社が買収に使った300億円が減り、B社の資産と負債が計上されます。B社の資産と負債の差は100億円でしたが、A社の資産からは300億円減っています。このままでは、BSの左右が同じ金額になりません。
この300億円と100億円の差額200億円が「のれん」として資産に計上されます。

「のれん」はB社のブランドや技術力、優良顧客のリストや商標権といった目に見えない資産ということになります。
横浜ゴムは23年5月にスウェーデンの農機用タイヤ大手、トレルボルグ・ホイール・システムズを買収しました。買収先の純資産に時価評価による増加分586億円を加算し、取得額から差し引いた約1550億円をのれんとして計上しています。
のれんの償却
のれんは徐々に価値が減るため償却しようというのが日本の会計の考え方です。それに対し価値は変わらないので償却をしないというのが欧米の会計の考え方です。
のれんの減損
ただし、のれんはすべての会計基準で減損の対象にはなります。そのため買収した企業が不振になった場合、BSの、のれんを減損し、多額の損失をPLに計上することになります。
どちらの場合も会社の価値が大きく減ったときに減損します。
サッポロホールディングス(HD)は米国のクラフトビール市場の低迷を受け、2022年に買収した米ストーン・ブリューイングでのれんの減損損失約139億円を2024年12月期に計上しました。
負ののれん
経営不振で単独では将来性も見込めない企業を買収する場合、100億円の純資産の会社を50億円で買えることもあります。その場合は50億円が「負ののれん」になります。負ののれんは発生した年にPLの利益として計上し、BSには計上されません。
SUMCOは23年12月期に、主力のシリコンウエハーの原料となる多結晶シリコン事業の取得に伴う負ののれん発生益を約200億円計上しました。取得により収益性の改善を見込んでいましたが、半導体メーカーの在庫調整が長引きシリコンウエハーの出荷は低調でした。
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2.決算書を読み込むキーワード
PLをみればどれだけ売れて、どれだけもうかったかは分かります。ただもうけが同じでも、BSに計上されている元手となるおカネや設備の量によって意味合いは違ってきます。両方を組み合わせることで本当に効率的な経営をしているかがわかるのです。
【ROE】株主のおカネで効率的に稼いだか
PLの純利益をBSの純資産で割った指標がROEです。株主が出したおカネとこれまで稼いだ利益からなる純資産からどれくらい稼いだかを示しています。海外を中心に株主が最も重視する指標でもあります。日本でも企業の成長力を高めるためにまとめられた指針で8%以上というのが示されました。
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【自社株買い】買い戻して効率アップ
割り算で求めたROEを高めるためには、分子の純利益を大きくするか、分母の純資産を小さくすればいいことになります。
自社株買いとは資産にある現金を使って自分の会社の株式を買う行為です。株式というのは純資産の裏付けを基に発行されているものです。自社株買いで現金が減った分、純資産が減り、ROEが高まることになります。保有している自社株はBSでは純資産のマイナス項目として表示されています。
自社株買いは自社株に対して投資することにもなります。自分の会社の株価が、実態より安いと市場にアピールする効果もあります。上場企業の24年3月期は最高益となるなど業績は堅調で、ROE向上への意識の高まりもあって約17兆円にのぼりました。
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【ROA】資産をうまく利益に結びつけたか
PLの純利益をBSの資産で割った指標がROAです。会社が持つ資産を使ってどのぐらい稼いだかを示しています。小さい資産で大きな利益を生み出すほど、効率的といえます。
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【総資産回転率】資産の売り上げへの貢献度合い
PLの売上高をBSの資産で割った指標が総資産回転率です。会社が持つ資産を使って、どのくらいの売り上げにつなげたかを示しています。
ROA(総資産利益率)を分解すると、総資産回転率に売上高純利益率を乗じたものになります。ROAを上げるためには、総資産回転率を上げるか、利益率を上げればいいことが分かります。
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3.決算書と株式市場
【PER】株価が示す成長期待
PLの純利益を会社が発行している株式の数で割ったのが1株当たり純利益(EPS)です。株価をEPSで割った指標がPERです。株価が何年先の利益を織り込んでいるかを示していることになります。成長が続くと思われている企業ほどPERは高くなります。
東証プライム市場上場企業の平均予想PERは14倍~17倍で推移しています。株式市場では同業他社などとPERを比べて、株価が割高か、割安かを判断する材料として使われています。
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【PBR】株価は解散価値を上回っているか
BSの純資産を会社が発行している株式の数で割ったのが1株当たり純資産(BPS)です。株価をBPSで割った指標がPBRです。会社のすべての資産と負債を処分した際に残るのが純資産とすると、BPSは会社が解散した際に株主が受け取る額になります。株式市場ではPBRが1倍以下だと、会社を解散したら株価以上のもうけをえられるため割安だとみられています。東証プライム市場上場企業の平均は約1.3倍です。
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